大東亜戦争における日本軍の組織的失敗を研究した名著「失敗の本質」。
本書はそのエッセンスのみを抽出した入門書。 一度本編の「失敗の本質」を読もうと思ったが、取っ付きにくかったので、こちらにした。
「失敗の本質」が言及しようとしているポイントを、現在の企業事例を織り交ぜながら解説しているため、50年以上前の教訓がすんなりと頭に入ってくる。 本編を読んでいないが、正直本書だけで十分ではないかと思うほどである。
一番のポイントは、日本は「時代の転換点」に弱いというところ。
従来のルールの中で改善を重ねて研ぎ澄してゆく能力において日本人は卓越している。 しかしながら、それ故にルールを覆す出来事が起ると途端に競争力を失う。 日本人は、自らルールを覆す側に立つことは稀で、また転換点に対する感度も低い。
本書では「失敗の本質」の要諦を以下の7つの視点から解き明かしている。
1) 戦略性
2) 思考法
3) イノベーション
4) 型の伝承
5) 組織運営
6) リーダーシップ
7) メンタリティ
それぞれが章に分けられているが、概要は以下のとおり。
<戦略性>
戦略とは、目標達成につながる勝利を目指すための考え方。 その為には勝つための「指標」を定めること。「指標」を間違えると局地的には勝利しても、無駄な勝利となってしまい目標達成には繋がらない。
<思考法>
日本は練磨の文化を持つ。 日本軍は超人的な猛特訓・練磨で培われた精強な能力が有ったが、米軍による新技術導入で長所を無効化された。
既存のルールを基盤とした延長線では限界がくることとなる。
<イノベーション>
イノベーションを創造するための3つのステップを紹介。
(1) 「既存指標の発見」
(2) 敵の指標の無効化
(3) 「新指標」で戦う
<型の伝承>
日本人は、武道と同様正しいとされている「型」を伝承する文化がある。 それと同様、ビジネスの世界においては、過去の成功体験が「型」として優先的に受け継がれている傾向にある。 過去の体験を伝承するのではなく、「勝利の本質」を伝えていくことが大切。
<組織運営>
上位下達の組織体系は組織の閉塞化を助長させる。 新戦略が生まれる場所はどこか?という点を正しく認識し、現場を活性化・情報のフィードバックをする仕組みを作ること。 不適切な人材が要職につく・ついていることは競合他社に有利になるだけなので、正しい人事評価の指標を持ち、組織の最適化に努めなければならない。
<リーダーシップ>
愚かなリーダーは自分の認識できる限界を組織の限界にしてしまう。 優れたリーダーは組織全体が持っている可能性を無限に引き出して活用する。
<メンタリティ>
「集団の空気」は体験的学習による連想イメージを使い、合理的な議論を行わせずに、問題の全体像を一つの正論から染め上げてしまう効果を持つ。 意図的な「空気の醸成」が導く誤認を打ち破る知恵を身につけるべき。
戦後の日本の経済成長を支えてきた製造メーカーが軒並み衰退の一途をたどっている中で、本書の冒頭にある一文が心に突き刺さる。
「日本人は今こそ、過去の失敗から学ばなければならない」
そして、こらのことを「投資」に置き換えると、今の自分の状況に当てはまる事が多々ある。
ここで言う”敵”を「投資」のケースに置き換えてみると、板読みなどのデイトレ・スキャルピングをやっている場合は明快で、板の向こうにいる別の投資家が”敵”と言えると思う。
ただ、オプション取引の場合は、明確に相手がいる訳ではないので、自分の感情(欲・恐怖・焦り)などが”敵”として置き換えられるのではないかと思う。
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